へなちょこ人間の独白

廉司という名前でtwitterを始めました。大学生のブログです。普段考えていることなどを書いています。

フェイル

アメリカに来て7か月と少し。最初に来た頃と同じ、雪景色に町は戻ってしまった。お風呂上りにシノーポリなんて聞きたくなったので今日はマーラー交響曲第六番、悲劇的を聞いている。いつもここに恥ずかしげもなく記している決意の言葉、頑張るという意思表明とは裏腹になかなかに頑張れない日々が続いているが、まあ人間そんなものだろう。

 

とか言ってるうちに、いよいよこの日を迎えることになった。同期の中で初めてフェイルして訓練が停止になる人が2人も出たのだ。前々から進捗が怪しいとはわかっていて、お偉いさんからも急かしの伝令は届いていて、まあつまるところ予期していたことではあった。この11月初旬までに自家用過程を終わらせることが条件だった。

 

10月に入ってからは例年よりも悪天が続き、なかなか飛べない日もあったがそれでも絶対に不可能な条件ではなかったと思う。こんなことは2人には口が裂けても言えないけど。まあ、パイロットの世界は本当に厳しいものである。たくさんの命を乗せながら仕事をするわけだから、お馬鹿さんに操縦を任せて無駄死にする人が増えないようにするためには当たり前なんだけど、それにしてもなかなか厳しいと思う。

 

ストレートで入れば若干二十歳、それ以外にもたくさん遠回りをしてくる人だっている。それにしても20代の始まりで自分の人生と戦わなきゃいけないのは大変なことだと思う。大学というゆりかごの中で、あるいは会社という学校の延長のようなところで、平穏を享受している大勢の方々とはかなり違うと思う。99.999%の人は1度歩みを踏み外せばもう戻ってくることは出来ない。落っこちた先で面倒を見てくれる人もいない。栄光に向けたある意味命がけの綱渡りである。

 

同じようなことは何回も書いてる気がするけど、身近な人がパイロットの夢に破れるのは今回が初めてかもしれないけど、僕がこの場所に来るまでに脱落していった同志たちはたくさんいるんだろうと思う。僕は運に任せて楽な道を辿ってこられたけど、それでもこの大学の倍率は4倍、航空大学で100倍、自社養成で1000倍、訓練を始めるまでにいかにたくさんの人が振り落とされることか。それでもなお、訓練が始まってからも何人かは落とされていく。そんな倍率の中から選ばれているのにそれでも落ちてしまう人がいるというのは驚愕に値するかもしれない。

 

とにかく、この世界の最初のステージに立って思ったことはとにかく自律が求められるということだ。自分で自分をコントロールし続けなければならない。というのも、僕たちを怒ってくれる人は誰もいないのだ。実際、やるべきことを逐一指示して、鼓舞してくれれば誰だって乗り越えられるような過程である。でも何故かそれをしてくれる人はいない。徹底して自分で考えろのスタンスを教育する側は取っている。まあきっと、機長として飛んでいる限りは全てのことを判断するのは自分で、誰も指示してくれる人はいないからだと思うけど。

 

頑張って勉強しなさいなんて言ってくれる人もいない。とにかく自分で自分を律して磨いていくしかない。それが出来なくなればたくさんの命を預かることは出来ないと、そういうことだろうと思う。

 

今のところの自分の課題は極端な性格ー死ぬ気で頑張って死ぬか、死ぬ気で手を抜いて死ぬかのどちらかしかできないところだ。なんとか適切な妥協点を見つけたい。訓練期間もあと11か月ほど。自分に負けない日が1日でも増えればいいなと思う。(他人事)