へなちょこ人間の独白

廉司という名前でtwitterを始めました。大学生のブログです。普段考えていることなどを書いています。

恐怖

今年初のちゃんとした雪がアメリカで降り、今朝窓の外は真っ白に塗られていた。雪も8センチくらいは積もり、道路はピカピカに凍っていた。そんな中、今日は訓練がないものと思ってリラックスしながら過ごしていたんだけど、夕方急な連絡が入ってソロでそこらへんを飛んで来ようということになった。

 

約1週間ぶりのflightで、気象条件は冬本番、自分の技量も最近の希薄なスケジュールのおかげで落ちているだろうし、何かと不安が大きかった。不安要素は出来るだけ教官に伝えていたが、ソロは全てのpilotが乗り越えなければいけないハードルであり、教官と飛ぶよりもはるかに多くの経験値を詰めるからと、半分は強引に押されて機体まで行くことにした。

 

いざ機体に辿り着くと、冬の寒さによって結露した水滴たちが翼の上から滴り落ちてきていて、翼の表面にはそれらが結露した氷がうっすらと張っていた。実際、他の教官と生徒が飛ぶフライトでは当たり前のようにそれらは無視して飛んで行ってたのだけど、自分はそれはそれは怖かった。

 

正直、悪い想像しか思い浮かばなかった。ひさびさに空を飛べるという嬉しさよりも、この氷によってもたらせる飛行機の性能の低下と、どんどんと飛び立っていく飛行機たちによる夜の空港の混雑、自分に自信が持てない程度の僕の技量を考えたら恐怖でしかなかった。他の同期は夜のソロにはわざわざ出ていないというのに、なんで自分だけがこんな関門をわざわざ通らなければならないのだろうと思った。

 

結局、いろいろと怖かったので飛ばないことにして、教官にも謝ってフライトはやめることにしたんだけど、これからプロのpilotを目指す人間としてこんな弱気の判断が良かったのかどうかはわからない。きっと僕がもっと自分の腕に自信をもって普段から学んでいる知識を盾にすれば安全に飛行できるはずだと信じることが出来れば飛べたはずなのだが、そこまで自分に自信を持てなかったし、未知の冬の気象に立ち向かっていけるほど自分は勇敢ではなかった。

 

パイロットは1回でも死ぬようなミスをすれば終わりだし、命は助かったとしても致命的なミスをすれば見込みなしとされて訓練を辞めさせられることだってある。確実に安全の側にいながら、出来ることを増やしていって技量を上げていくしかないのだが、それもこういう1つ1つのフライトを通じて決断の精度を磨いていかないと何もできずに終わってしまうのだろう。この1回のフライトで訓練の進み具合が大きく遅れるかもしれないのと同時に、この一回を安易に飛んで事故を起こせばもうパイロットにはなれないのかもしれないのだ。

 

将来お客さんのことを考えればギリギリの気象でもしっかり飛ばして出来るだけお客さんの要望に応えることが求められるんだろうけど、今の僕にはそれが出来ないと思った。裏を返せばこれから成長していけばいいだけ、そういうものなのかもしれない。

 

とにかく次のフライトまでには自分で出来ることを全部やって、ソロに行ける状態にいなければならない。目の前にやることはたくさん埋まっているので、休む暇もなくてしんどいけど頑張っていこうと思う。

 

ついでになっちゃったけど家族からの仕送りが届いて泣きそうになった。それではおやすみなさい。