へなちょこ人間の独白

廉司という名前でtwitterを始めました。大学生のブログです。普段考えていることなどを書いています。

音を取り戻す

本当に辛かった。この土地の、この冬は僕にとって大きな苦しみだった。気が付いたら2か月もたっていて、窓の外では雪解けが始まっているけど、ここまで長かったしだからこそ、この春への感謝はとてつもなく大きい。毎日当たり前のように太陽を拝めることの喜びと言ったら言葉にするべきものでもないくらいだ。

 

記事を全く書かなかったこの2か月の間ずっと辛かった。ここにきて何か書けばよかったんだろうけどそれもできないくらい余裕がなかったのかもしれない。

 

この冬の間外は当たり前のように毎日曇りだったし、地球上で一番寒かった。外に出るには考え得る限りたくさんの服を着ないと寒さから身を守れなかった。雪は積もるばかりで溶ける気配が微塵もなくて、一生融けることのない寒さの塊が大きくなっていくようで憂鬱だった。そんな天気と同じように、というかむしろそんな天気につられて僕の心の中もずっとずっと冬だった。

 

ただでさえ変化のない毎日の中で心はマイナスの領域でずっと上下していた。東京に住んでいれば辛いことがあった次の日には何か楽しいことが待っていたし、お店に行けば好きなものを食べられた。家族の存在はありがたかったし、友達もたくさんたくさんいて、かわるがわるいろんな人に会えた。ここには何もなかった。しんどいだけの土地だった。

 

飛ぶことも、音楽をすることも辛かった。外にいるだけで辛いのに、わざわざ外に出て訓練をしないといけないのは苦痛だった。オケもオケで、今シーズンの曲は現代曲の難しい奴で、ほとんどが高校生のこのオケにとっては取り組みやすい課題じゃなかった。指揮者の先生はいつも怒っていたように思うし、大して力になれない自分が辛かった。そしてそもそもフライトもオケも、たびたび襲う殺人的なブリザードによって中止になった。はじめは家で休めるのが嬉しかったけど、それは罠だった。

 

天気が悪くてすることもなく、家で寝てるとどんどん自分が空っぽになっていった。何もかものやる気がなくなった。ほとんど鬱だった。とりあえず家で寝てよう、そう思うようになった。飛行機も上手に飛ばせなかったし、楽器も鳴らなかった。特に音楽に関しては辛かった。リードは重くて響かせるのにすごく体力が必要だった。30分吹くだけで体がしんどくて練習をやめたくなった。オケに行っても自分の音が飛んでいかないので面白くなかった。高校生の頃の自分はもっと輝いていたしアマオケ時代も幾分かマシだった、毎週そう思った。

 

でもやまない雨はないし、終わらない冬もない。明けない夜もない。それは真実だった。

 

春の訪れとともにオケの本番はやってきて、辛かったなりに力のある本番になった。結局最後に報われたと思えたのは良かった。素敵な一瞬の響きだけで報われることが出来るのでオケは好きだ。

 

一昨日、プロの演奏家に見てもらえる機会があった。1時間だけだったけど、本当に貴重だった。最後に師匠と練習したエチュードを見てもらって、息の吐き方を確認しただけでびっくりするくらい楽器が鳴るようになった。本当に嬉しかった。一人で練習してると息の使い方も分からなくなって、音楽が出来なくなるのがしんどかったけど、昨日やっと久々に自分の音を取り戻した。

 

また練習を続けていくうちに自分の音はどこかに行ってしまうかもしれないけど、もう大丈夫、いつか戻ってくることが確信できた。こんなに長い冬を耐えたんだから、どんなに長い冬でも耐えられる。春は絶対に来る。絶対に。